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Bestshot10
第29回 花弁十色
坂口安吾の「桜の森の満開の下」の冒頭は「桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子を食べて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだの浮かれて陽気になりますが、これは嘘です。…中略…これは江戸時代からの話で、大昔は桜の花の下といえば怖しいと思っても、絶景だなどとは誰も思いませんでした」から始まっている。この冒頭は時代によってものの見方や感じ方が変わるということを意味していると思われるが、その要因として見た目や咲き方(品種)の違いから桜への思いが変化したことも示唆しているかもしれない。日本の桜は、江戸期中頃まではヤマザクラが中心だったが、江戸末期・明治期からはソメイヨシノが主流となった。今、日本の象徴の花とされるソメイヨシノも意外と新しいのだ。
日本に自生する桜の基本品種は11だが、現在ではバラ科サクラ属に分類されるものは300品種を超えるという。要するに多様性の時代になってるのだ。時代の流れによっては、桜の品種の主役が変わり、」日本人の桜への思いも変わるかもしれない。
花の姿は突然変異などの自然の変化だったり、人工的な品種改良により、多彩に変っていくものと言ってよいのだろう。だから、品種の変化とともに桜の見方が歴史的に変化していくことは当然であり、これからも起こりうるだろう。それゆえ多様性は重要だといえよう。人間社会においても同様だと言えるのだが・・・。
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