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Bestshot10


第31回 杮葺・檜皮葺

   神社仏閣によくみられる屋根の葺き方として、現在は瓦葺の大屋根が目立つが、かつては茅葺に加え、古くから杮(こけら)葺、檜皮(ひわだ)葺ともよく用いられた。杮葺と檜皮葺の違いは、原田多加司の「檜皮葺と杮葺」(学芸出版社)では「檜皮葺とは檜の樹皮を立木から剥ぎ取り、用途におうじて切り揃えたものを、竹製の釘で留めつつ葺き上げていく工法」とし、「柿葺は素性のよい椹や杉、栗などの原木を三〇㎝程度に輪切りにし、それを包丁を使って割ったもの」を使用するとしている。「耐久性に優る檜皮葺は、重厚で曲線の多い社殿、仏堂など神仏の館に、柿葺は開放的な軽快さを持ち、修理も簡便なことから書院、客殿、茶室など人の出入りのある建物に多く用いられてきた」と解説している。 
 「太平記」になかに、足利尊氏の弟直義の側近であった畠山直宗が政争に敗れ、越前に流罪となるが、越前のわび住いに比して都の住まいを「サシモケ(気)高カリシ、薄檜皮之屋形ノ、三葉四葉ニ作リ並ヘタルニ、車馬群集シ、綺麗充満シテ、堂上花ノ如ク」(太平記:西源院本再版)として、権力者の上質な邸宅の屋根が檜皮葺であったことを描写している。また、福島県いわき市にある国宝白水阿弥陀堂の屋根は明治期に茅葺から栩葺(杮葺の一種)に変更されたものとはいえ、五木寛之は「非常に硬質な感じがありありながら、優美な線がでていて美しい」(「百寺巡礼第7巻」)と評している。
 しかし高齢化による職人の減少や古文書の散逸などで茅葺と同様に日本の伝統的建築技術の伝承が危ぶまれている。この優美な日本独特の屋根を保存継承していく術はないのだろうか。

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