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Bestshot10
第17回​ ​層塔麗容

梅原猛によれば、人間は元来、「高所衝動」を本能的に有しているがゆえに「権力は権力を求めて止まず、塔は高さを求めて、止まることを知らない」のであり、それがヨーロッパの塔の本質だとしている。
ただ、日本では「神社建築がもっとも古い日本人の造形意思を示すとしたら、それは自然に囲まれ、自然に従った人間の意思を示す」のであって、棟木や屋根のラインが日本建築の主役となっていると指摘する。それではなぜ日本の寺院に三重塔や五重塔が存在するのか。それは現世肯定思想の大乗仏教の流入によって、「日本人に初めて無限への憧憬を教えた。たとえば、法隆寺の塔である。この塔のように無限に天へ昇ろうとする意思の力を持」つようになったという。
本来、仏教における塔は舎利(釈迦の骨)を埋める場所を守るためにあるが、その一方では、大乗仏教の現世肯定が天に向かって延びんとする人間の意思が反映しているため、この二つの力の矛盾から仏教の塔は成りたっているとも、梅原は指摘している。なお、寺院の搭状建築には屋組みが伴う層塔と庇だけが重なる簷塔があり、その典型例が談山神社の十三重塔である。

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